ドイツ経済の歴史から投資を学ぶ!

日本に次ぐGDP第4位のドイツという国について、どのようなイメージをお持ちでしょうか??

経済政策というと、最近では、どうしてもニュースなどで、アメリカ、中国などが注目されがちですが、実は、ドイツも世界有数の経済大国です。

ドイツの歴史というと、どうしてもヒトラーの悪いイメージが付きまといがちですが、実は、あの頃の時代にも、いくつもの画期的な経済政策を打ったり、教科書に書かれていない様々な興味深い歴史があります。

 

ドイツの歴史について、ヒトラーが出てくる前後の経済政策に焦点を絞って、歴史的事実を整理し、現代にも通じる部分については、経済を読み解くヒントにしていきたいところです。

 

第一次大戦後のドイツ経済の崩壊

 

第一次世界大戦で敗戦国となったドイツは敗戦国の中でも甚大な経済的ダメージを受けていました。

 

ドイツ経済が崩壊した理由は、主には、かの有名なベルサイユ条約でした。

 

ベルサイユ条約の内容は主には、以下の内容でした。

 

・すべての海外植民地を破棄する

・7分の1の国土、10分の1の人口の割譲

・徴兵制の廃止

・戦争責任を負い賠償金を支払う

 

特に、国土を失ったことと、賠償金はかなり痛手でした。

農耕地の15%、鉄鉱床の75%を失い、ドイツの鉄鋼生産量は激減しました。

 

また、連合国への賠償金は1320億マルクというのが、当時のドイツの税収の十数年分という超巨額なものでした。

 

ハイパーインフレについて

 

もともと第一次大戦中に戦費調達のために赤字国債を乱発したりしていたこともあり、インフレ気味だったのが、戦後、ドイツ屈指のルール工業地帯が占領されたことにより、さらにインフレが進行しました。

 

現在は、赤字国債を乱発して、直接、中央銀行に引き受けさせるのは、インフレの原因になることは歴史的にわかっているので、禁止されていることですが、当時はそうではありませんでした。

 

一時期は一般的な物価水準は25,000倍を超えるほどまで膨らみました。

 

当時のドイツマルクは、対ドル為替レートは1ドル=4,200,000,000,000マルクにまで、マルク安が進み、1年で7桁以上も価値が下落するハイパーインフレ状態だったのです。

 

こんな桁数は見たことはありませんよね??

 

シャルマール・シャハトが行ったレンテンマルクの奇跡

 

この未曽有のハイパーインフレを救ったのが、シャルマール・シャハトという人です。

 

ドイツの経済学者ですが、のちに財政の魔術師と言われるような奇跡を起こします。

 

この人は、ハイパーインフレを終息させるために、レンテンマルクという紙幣を発行します。

 

このレンテンマルクはどういう紙幣だったかというと、ドイツの国土(不動産)を担保とする債券で、価値を裏付けた紙幣でした。

 

要するにハイパーインフレが起こるときには、その国のお金に対する信頼が皆無になっていることが原因なのです。

 

そこを、ドイツの国土、つまり土地を担保にすることで、紙幣の発行上限を明確にしたのです。

 

1レンテンマルクは1兆マルクと交換されました。

 

担保があり、価値が裏付けされたレンテンマルクが普及するにしたがい、インフレは終息していきました。

土地は、建物などと違い、戦争で領土を奪われない限りは、この世から突然消えることはないため、担保としては効果抜群でした。

今までは、兌換紙幣という、金などと交換できる紙幣はありましたが、視点を変えて、担保を付けるという発想は画期的でした。

 

紙幣というものは、信用に基づいて成り立っていることがよくわかりますし、非常に人々の心理的な目に見えない要因が多く関係しています。

レンテンマルクように人々が安心するものを担保にするとか、その紙幣に対して、価値の裏づけを持たせることで、通貨としての機能を回復させることができます。

 

いま、日本の財政がかなりひっ迫し、日本の財政に対する評価は落ちてきていますが、日本円が機能しなくなるかどうかは、日本円に対する信頼性に掛かっているということが言えるでしょう。

 

「人々の信頼」を価値の裏づけにできている間は、日本円は破綻することがないような気がします。

そして、まだまだ国内での日本円の信頼は高いので、当分はこのシステムは維持される気がしています。

 

ナチス政治の台頭

 

ハイパーインフレは終息していっていったところでしたが、さらなる危機がドイツを襲います。

 

アメリカに端を発した1929年の世界恐慌です。

 

実はドイツは、戦後にアメリカからの投資マネーがかなり入ってきていたので、ハイパーインフレ不況の中でも、唯一の好材料でした。

 

しかし、世界恐慌により、アメリカは一気に投資を引き揚げてしまいました。

 

そうすると、失業率が40%を超える事態になり、国民の不満は高まっていました。

 

そんな時、登場したのが、ヒトラーです。

 

ヒトラーは、以下のような経済政策を行いました。

 

・ケインズ型の積極的な財政出動を実施

⇒アウトバーン(高速道路)の建設

⇒住宅の整備

⇒再軍備(失業者を軍人として雇った)

 

・賃金の公正な分配(これは意外ですよね)

⇒ナチス直属の労働組合に監視させ、不正な雇用主を処分

⇒配偶者や子のいる中年の雇用も積極的に推進

 

・食料価格安定法の制定

⇒物価を厳しく統制する

⇒食料品などの不正な値上げがあれば営業停止

⇒ハイパーインフレの未然防止を徹底

 

ヒトラーは非常に経済政策の上手い人でした。こんなにいろいろまともなことをやっているのは意外ですよね。教科書にも中々出てこない歴史的事実ですね。

ただ、これら政策をやるには、巨額の資金が必要です。

 

巨額な資金はどうやって調達??

 

巨額な国家資金を、また大量の赤字国債の引き受けなどで、調達すると、通貨の発行上限がわからなくなり、通貨に対する信頼が揺らぎ、ハイパーインフレになってしまいます。

 

乱発は良くないことはわかっています。

 

ではどうやって、資金調達をしたのでしょうか?

 

先ほど出てきた、シャハトの助言により、ヒトラーは、有限会社冶金研究協会(メフォ)という会社を作り、この会社から様々な軍事会社に兵器等を発注し、購入代金はメフォ手形と呼ばれる手形で支払いを約束する形をとりました。この手形の支払いには、政府保証を付けました。今も、そうですが、金融の中で、一番信頼度が高く、リスクが少ないのが、この政府保証です。これは信頼度抜群です。

 

手形の償還期限は3ヶ月でしたが、期限がくると自動的に3ヶ月延長され、5年まで延長を繰り返すことができ、実際は5年まで延長されました。

この手形は、一種の国債による方式での通貨増発を伴わないので、インフレの心配がありませんでした。

 

つまり、手形の償還まで、市場にお金がばらまかれないので、赤字国債や通貨の増刷などによらず資金調達(物資調達)が可能になりました。これにより、インフレを伴わない財政出動を可能にしました。

 

軍事会社も政府が5年後の支払い保証をしているのだから、安心して受注し、兵器を大量に製造しました。たとえ、5年後の償還になっても、政府保証がついているなら、金を払ってくれるだろうと想定していたのです。

 

ただ、結局手形の償還期限として設定していた、5年後は第二次世界大戦に参戦し、結果、支払いが厳しくなり、ついに、ヒトラーはマルクの増刷に手を出してしまいます。

 

1937年、さらなる軍拡を要求して、マルクを増刷しようとするヒトラーやゲーリングやドイツ軍とにシャハトは、対立して、経財相を解任されます。

 

これでシャハトの鋭敏な感覚で抑えられていた手形の発行に歯止めがかからなくなり、あとは「手形は踏み倒し、侵略で他国から収奪する」を前提に政治が動いていくようになります。

 

これにより、またもや急激なインフレがドイツを襲い、コントロールを失ったヒトラー政権は、借金の返済のために、他国の財産を強奪して、窮地を脱出することを考え、暴走始めていきました。