以前の記事で、学校事務の仕事について、解説いたしましたが、公立学校を取りまとめ、地方の教育行政の中心を担っている「教育委員会」という組織について紹介したいと思います。
「教育委員会」という言葉はニュースなどでよく耳にするかと思います。
最近では、体罰やいじめ問題で、よく記者会見を開いたりしている映像を見たことがあるでしょう。
教育員会とはどんな組織なのでしょうか??
- 先生だけが所属する組織なの??
- 親が教育委員だって人も居たけど普通の一般市民も教育委員になれるの??
- 行政職員の組織での立ち位置はどうなってるの??
これら含めたあらゆる疑問に答えることができるよう解説していきたいと思います。
教育委員会制度
地方公共団体は、「教育・学術・文化」に関する事務を行う場合は、その性質上、政治的中立を維持すること、行政が安定していること、住民の意思を反映することが求められます。
これはどういことかというと、「教育・学術・文化」は、民間だけに任せていると、どうしても利益第一優先になり、本来達成すべき公共の利益を最大化することが難しくなることがあります。
特に、教育は、お金を掛けても成果が上がらないこともあったり、採算が取れる教育が必ずしも良い教育ということにはならないからです。
そのため、地方自治体である都道府県及び区市町村に、教育の権限を与えるとともに、知事又は区市町村長から独立した組織として、教育委員による合議制で方針を決める機関である教育委員会が設置されています。つまり、大きな教育の方針は、教育委員のみんなで話し合って決めましょうということです。
教育委員は選挙で選ばれた地方自治体の長である知事などが議会の同意を得て選任するので、民意を反映した人が選ばれており、住民の意見を代表しているとも言えます。
委員の構成については、いくつか定めがありますが(地行法)、特殊なものとしては、「委員には保護者も含める」(地行法)というものもあります。
中には親が教育委員やっていたという人もいるというのは、住民の意向がきちんと行政反映されるようにするためです。
教育委員は自治体のトップとは独立して動くことができるので、独自の意思決定を行うことができます。
これは、教育に政治を介入させないためでありますが、近年は教育委員会がそれをいいことに、偏った教育に向かいがちになっているとの指摘もあります。
大阪などでは橋下さんが、教育委員会制度を改革して、トップ(知事)の意思が多少なりとも教育委員会に反映させるような制度づくりを行ったりしておりました。
教育委員会の組織概要
教育委員会とはどのような組織構造になっているのか??以下の、文部科学省で公開されているものが、一番わかりやすかったので、抜粋します。
文部科学省HP参考
私が所属していたのは、下段の方にある事務局と呼ばれる部分でした。教育委員会で合議で決まったことについて、具体的にプレーヤーとして実行していく部隊です。
事務局に所属している行政職員は、合議で決まったことはもちろん執行していかなければなりませんが、教育委員に政策の提案も行うこともできます。教育委員は、提案があれば、検討しなければなりません。
教育委員は常勤ではない方がほとんどですので、実質は事務局職員が様々な施策を実行しているという実態はあります。もちろん、議会や教育委員を無視した政策は実行できませんが、うまく企画し、うまく根回しを行い、教育行政を実施しています。
教育委員会の仕事
教育委員会の仕事は文部科学省のHPでは以下のように掲載されています。
教育委員会は、教育、文化、スポーツ等に関する事務を処理。 | |
学校教育の振興 |
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生涯学習・社会教育の振興 |
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芸術文化の振興、文化財の保護 |
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スポーツの振興 |
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地方教育行政の組織及び運営に関する法律には以下のように記載されています。第三章 教育委員会及び地方公共団体の長の職務権限
(教育委員会の職務権限)第二十一条 教育委員会は、当該地方公共団体が処理する教育に関する事務で、次に掲げるものを管理し、及び執行する。一 教育委員会の所管に属する第三十条に規定する学校その他の教育機関(以下「学校その他の教育機関」という。)の設置、管理及び廃止に関すること。二 教育委員会の所管に属する学校その他の教育機関の用に供する財産(以下「教育財産」という。)の管理に関すること。三 教育委員会及び教育委員会の所管に属する学校その他の教育機関の職員の任免その他の人事に関すること。四 学齢生徒及び学齢児童の就学並びに生徒、児童及び幼児の入学、転学及び退学に関すること。五 教育委員会の所管に属する学校の組織編制、教育課程、学習指導、生徒指導及び職業指導に関すること。六 教科書その他の教材の取扱いに関すること。七 校舎その他の施設及び教具その他の設備の整備に関すること。八 校長、教員その他の教育関係職員の研修に関すること。九 校長、教員その他の教育関係職員並びに生徒、児童及び幼児の保健、安全、厚生及び福利に関すること。十 教育委員会の所管に属する学校その他の教育機関の環境衛生に関すること。十一 学校給食に関すること。十二 青少年教育、女性教育及び公民館の事業その他社会教育に関すること。十三 スポーツに関すること。十四 文化財の保護に関すること。十五 ユネスコ活動に関すること。十六 教育に関する法人に関すること。十七 教育に係る調査及び基幹統計その他の統計に関すること。十八 所掌事務に係る広報及び所掌事務に係る教育行政に関する相談に関すること。十九 前各号に掲げるもののほか、当該地方公共団体の区域内における教育に関する事務に関すること。
行政職員とともに事務局で働く職員
教育委員会事務局には、学校における教育課程や学習指導などの専門的な事項の事務を担う指導主事と呼ばれる職員を置くことになっています。
この指導主事と呼ばれる職員は、公立学校の教員が人事異動の一環で教育委員会に配属されることを指します。
教育委員会に教員がいるのは、この人事異動によります。指導主事として働いた後は、校長などに出世してでていくことになります。
教育委員会事務局の実際の仕事
総務
総務と一口に言ってもいろいろな仕事があります。予算の取りまとめ、業者との契約の手続き、ICTなどのネットワークを使った教育の企画など、教育政策の屋台骨を支える業務を担います。毎月行われる教育委員会の会議の準備等、委員の日程調整、会議資料の作成なども行います。
人事関係に関しても扱います。教育委員会その他学校職員の任免に関する事務処理を行いますが、人事に関する決定権者は、教育長(教育委員の中のトップ)です。実際は、その補助的な事務がメインです。
統計調査などの事務も担います。毎年、文部科学省から、公立学校の実態に関す調査が数多く投げられてきます。文部科学省としても、日本全国の情勢を常に把握し、国全体の教育行政を考えるのに生かす必要がため、この調査は、大事な調査になります。正確に把握するために各自治体の協力が必要になります。学校基本調査や地方教育費調査などがメインで、各校の生徒・児童数の把握や、各学校の敷地面積、施設の配置図、耐震化状況など、調査は多岐に渡ります。それら調査を他部署と連携したり、学校へ調査を投げて集計するなどして、調整し、回答を作成していきます。
学校教育
施設や備品の管理が一番のメイン業務になります。施設に関しては、学校の改築、大規模な改修工事などの計画を立て、予算の積算を行います。また、各校で起きる修繕などについても、各学校で対応できないものについては、予算措置をしたり、契約をして業者を手配できるようにするなど、行う必要あります。
子供の安全を確保するために、体育館などを耐震化したり、避難所として各学校を活用するために、市区町村と協定を結ぶなど、地域の防災拠点の形成に貢献する事業を行ったりします。
児童・生徒に関する事務としては、児童・生徒の転退学、授業料や入学料に関する事務などを処理します。学校でできるものや、学校の独自運営にかかわるものについては学校に任せますが、取りまとめが必要な場合は、教育委員会事務局で取りまとめることになります。また、学校で必要な光熱水費などの公共料金の予算などを積算し、各学校に分配したりするのも仕事の一つです。また、備品の購入などに際しても、適切に学校に行き渡るように調整します。
学校への指導も行います。学校経営について専門的な知識を持たない学校職員などが多い学校や、学校活動で生じた様々な問題を、指導主事などが専門的な指導・助言を行います。
教科書の採択や学校給食に関する事務も担います。
社会教育
文化財保存や活用、スポーツ振興の一環として、マラソンイベントの企画などを行ったりします。
以上が、教育委員会事務局の仕事の概要です。
次回は、教育委員会事務局で私が経験した業務について、紹介していきます。