都道府県教育委員会で取り組む公立学校の新築・改築業務について

都道府県教育委員会では学校教育に関する行政事務を行っておりますが、その仕事は多岐に渡ります。その中で私が経験した学校施設に関係する仕事について紹介します。

 

学校施設に関する仕事は、生徒が実際に過ごす建物に直結する仕事であり、非常に幅広く、かつ重要な使命を担っています。教育行政の中でも、実物・実態に直結するうえ、不備があると生徒の安全にかかわるため、失敗は許されません。その分やりがいもあります。どのような仕事があるのか見ていきましょう。

 

学校の新設・改築・改修に関する仕事

学校の老朽化状況などを主に勘案しながら、既存校舎の解体・改築工事や、一部の老朽化であれば、解体はせずに改修を行ったり、また、新しい学科などを新設する計画がある場合は、計画を立てて新しい場所に新設したりします。具体的には、以下のような作業を行います。

 

基礎調査

学校を新設・改築する場合などに、外部の調査・コンサルティング会社や設計事務所などに委託したりして、学校建築にあたっての基本構想などを策定させます。ニーズ調査やその地域独自の懸案事項などを分析することにより、学校建築にあたっての方向性を決めます。

また、実際に建てる場所について土壌汚染物質などが出ないか調べたり、登記簿謄本や住宅地図、公的資料や市販の資料などの書類や土地に関する情報を入手して、調査対象地とその周辺の土地についての土地利用履歴を調べて、現在から過去に何があって、どんな汚染物質について汚染の可能性があるのかを調べたりする地歴調査などを行います。埋蔵文化財と言われる、土地の下に埋められている文化財がないか調査を行い、発見された場合は別の場所で工事することを検討しなおさなければなりません。埋蔵文化財の調査は「包蔵地」としてしていされている場所に建てるときにのみ行います。VOC事前調査や、地盤測量調査などそのほかにも様々な調査を実施します。要は、立てる場所が安全かどうか確認するために、調査委託を行い、結果を見て検討を行います。

 

基本設計

設計とはそもそも何かということですが、建物を建てるための準備ですが、要は、「学校を建てるにあたってのレシピを考える作業」です。教育委員会行政職員や学校の教員、設計事務所などと打ち合わせしながら、建設する学校に対する考え方をまとめ、敷地、立地条件などを調査し、建築基準法等の関係法令に照らし合わせ、平面、立面などの基本設計図を作成します。『希望』が具体化される重要な課程です。基本設計ではあくまで大まかな考え方を整理するので、敷地に対する建物の配置、もちろん間取り、どんな外観になるのか、面積や概算の工事費などもこの段階で検討していきます。

そういう意味において、設計の一番重要な位置を占めるのが、この基本設計と言うことができます。

 

実施設計

基本設計が出来上がり、あなたの建物に対する考え方も十分理解したので、工事に着工できる図面を作成します。

意匠設計図、構造設計図、構造計算書、設備設計図、各工事仕様書、工事費積算書、建築関係諸手続き書類などが含まれます。

また、ここで作成した設計図の一部を使って「建築確認申請手続き」を行ない「建築確認通知書」を受理してからでなければ、工事に着工できません。

普通、民間の中で建築行為を行う場合は、確認申請が基本ですが、国の機関、都道府県の機関、特に公益目的とされる機関などが、主体となって建築する場合は、「計画通知」という行為が必要になります

概念的には、通常は、確認申請を受理する側が公共機関なので、取り締まる側の人が、自分が違法行為をやるはずがない、という発想で、計画通知で済ませてしまいます。

 

工事契約

入札手続きにより、工事業者を決定しますが、工事業者との契約手続きは一つの部署だけでは完結しません。学校の改築計画などを立て、政策を企画する事務方の職員がいる部署では工事契約の起工は行いません。あくまで、行政的な立場から、計画や事業立案、予算策定を行った後は、技術的な側面が強い工事契約の起工や進捗管理、完了検査などは技術職員がいる部署で行います。工事の規模が小さい案件は教育委員会の工事部署で行いますが、金額を大きくなると、財政部門の中の工事部署で起工します。

あくまで、行政部署職員は計画・予算面について事業に携わりますが、その後は、別部署に、予算執行委任・工事の委任を行います。

監理業務委託

工事以降の技術的な仕事は工事部署が責任を持って行っています。そこで、工事の進捗管理のための監督・指導を自前の職員でも行いますが、協力して行うために外部の企業にも委託したりします。主に、設計事務所が担うことが多いのですが、これが監理業務です。工事期間中は定期的に、現場のプレハブ事務所などで、工事部署職員・教育委員会職員・監理事務所・建築を担当するゼネコン・その他設備関係業者などを含め、打ち合わせを行い、進捗に応じて出てくる懸案事項について、処理します。

予算・事業計画策定・管理に関すること

 

予算配付

予算を配布、要するに学校へ渡す日は、各自治体の規定によって違いますが、だいたい、原則1日と15日に合わせて財務会計システムなどを使って配布するのが通常かと思います。各学校の担当からの増額申請に基づき、こちらで内容確認のうえ、起案し、財務会計で処理して、予算措置をします。また、予算の総額に対しての執行管理等を行います。予算については、担当が上司などと相談して妥当かどうか判断する側面があるので、予算の担当者はかなり大きな権限をもちます。認めるか認めないかで学校の運営方針が変わるわけですから、責任重大です。

施工委任・執行委任

施工委任や執行委任と呼ばれる仕組みがあります。これは何かというと、例えばで考えます。家を自分が建てる時に、自分で材料を調達して、自分で工事をする人はいませんよね。必ず、業者に頼むなどして、建ててもらいますよね。これは、行政の中でも同じことで、教育委員会の私がいたような施設担当の部署で、すべて完結することはありえません。どこの学校を建て替えるのか、どの学校のどの部分でトイレの改修工事を行うのか、耐震化補強工事を行うのか、グランドの整備工事を行うのかなどの計画をあらかじめ決めたら、工事を専門にやっている部署にお願いして、工事の契約から、監督、予算の執行までやってもらいます。それは、専門部署がまとめて処理した方が効率がいいですし、技術職の職員もその部署に集中させることができます。ただ、厳密に言うと、工事などの金額に応じて、教育委員会の中の工事専門部署で済ませるのか、教育委員会とは別部門の自治体全体の財務部署、財政部署などの大きな部署の工事専門部隊にお願いすることの2パターンがあります。近年は技術職員の人で不足から、財務部署などの技術職員を集中させている傾向があります。

これら一連の流れで、工事処理を依頼することを施工委任などと呼びます。